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冷蔵庫内気温と消費電力量の測定

冷蔵庫の運転モードを変えて庫内気温と消費電力量を測定します。

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はじめに

消費電力量が見えるサイネージを作ってから節電を意識、というか電気を効率的に使いたいな……と思うようになりました。 でも無駄に電気を使っているようなところは思いつきません。 そのサイネージが無駄?これは見逃してください。

一般に、家庭内での消費電力量が多いとされる家電はエアコンか冷蔵庫らしいです。 エアコンは使わざるを得ません。どうしようもない。 でも冷蔵庫は何とかなるのでは? なんか、温度の強弱を調整するとかあるじゃないですか。 自宅の冷蔵庫だと「強弱」の設定はないようですが、「冬期」とか「通常」とかいう運転モードの設定はありました。 直感的には冬期モードはあまり冷やさなくても済むときに使う?ならこれが「弱」に該当しそうですね。

説明書を見て確認しましょう。 自宅にある冷蔵庫は「SHARP SJ-D14B」であり、この説明書によると……

運転モードについて(SJ-D14B説明書より) 運転モードについて(SJ-D14B説明書より)

「冷蔵室の温度に合わせて冷却」「『冬期』『通常』のつまみは冷凍室に送る冷気の量を調整するもの」「10℃以下なら冬期に切り替え」らしいです。 別に冬期モードにしたからといって冷却を弱めるわけではない模様、むしろ夏場に冬期モードにすると必要以上に冷やして結果的に消費電力量が増えてしまうのでは……。

そこで本稿では、いくつかの運転モードにおける庫内の気温と消費電力量を調べまとめます。 まとめた結果をもうここで書いてしまいますが、

  • 夏期に冬期モードを使うと消費電力量が多くなる
    • 冷凍室を過剰に冷やすため
    • (さらに冷蔵室が冷えすぎたことを検知し、ヒーターで温め直すかも知れない)
  • 「通常モード全振り」と「冬期・通常の中間」では違いが無かった
    • 同じくらいの頑張りで冷やせたため?それとも温め直しのヒーターを使わないため?
    • 「通常モードちょっと振り」などもっと細かく検証すれば違いはあるかも知れない
  • なら常に通常モード全振りにしておくか、というのは懸念もある
    • 説明書どおり「冷凍室の冷えが弱くなる傾向」になると思われる
    • 周辺温度に合わせて適切な運転モードに設定しましょう

です。 以下からは測定方法について述べ、実際に測定した結果を載せていきます。

測定方法・測定条件

まず温度の測定方法についてです。 ここではnetatmoの屋外モジュールを2つ用意し、冷蔵室と冷凍室に1つずつ入れて気温を測定します。 想定される気温は冷蔵室で2℃~5℃ほど、冷凍室で-18℃です。 netatmo屋外モジュールだと最低-40℃ほどまで動作するようなのでいけるでしょう。 ただし、この辺はモジュール内部で使う電池の性能にもよります。 アルカリ乾電池だと推奨使用温度は最低5℃ほど、リチウム乾電池1だと最低-40℃まで大丈夫です。 そこで冷凍室ではリチウム乾電池を使ったモジュールを、冷蔵室では(ちょっと頑張ってもらって)アルカリ乾電池を使ったモジュールを使います。

また、冷蔵庫近くの気温もnetatmoの親機で測ります。 至近距離ではなく冷蔵庫から2mほど離れた位置での気温です。 本当はもっと近くで測ったり、冷蔵庫と接する壁の温度も測りたいところですが横着しました。

次に消費電力量の測定方法についてです。これには市販のワットモニターを用いました。 冷蔵庫のコンセントとプラグの間に挟み込むタイプで、これにより測定された積算電力量を測定値とします。

ここで検証する冷蔵庫はコンプレッサーやヒーターをON/OFFするだけ(中間が無い)、さらにそれぞれが使用中に消費する電力量も異なります(コンプレッサーは定格53W、ヒーターは定格110W)。 それなら積算電力量というよりも瞬時消費電力を見れば、コンプレッサーやヒーターを使っている時間がそれぞれわかるので良さそうですが……この測定はできませんでした。 メインブレーカー全体の瞬時消費電力はこんな感じで取得でき、冷蔵庫以外の消費電力が少ないときではこんな感じでギザギザする様子(おそらくコンプレッサーが動いている)が見えます。

メインブレーカー全体の瞬時消費電力 メインブレーカー全体の瞬時消費電力

ただ、冷蔵庫以外もバリバリ電力を消費しているときは埋もれてしまって判別できません。 自宅の環境では子ブレーカーごとの測定は不可2で、ワットモニターに表示される瞬時消費電力を読み取るのも手間で諦めました。

ちなみに、SJ-D14Bの仕様上における年間消費電力量は「290 [kWh](JIS C 9801:2006の測定方法による)」とのこと。 でもJIS C 9801:2006の測定方法だと実環境の消費電力量よりも低く出てしまうらしい。 JIS C 9801-3:2015のほうが実環境に近い。 この冷蔵庫の2015による測定結果はありませんでしたが、(マイナーチェンジだけでほぼ変わっていないと思われる)後継機種のSJ-D14Cでは「325 [kWh](JIS C 9801-3:2015の測定方法による)」でした。 多めに見積もって平均1 [kWh/日]3くらいですね。 これで夏期は少し多めに、冬期は少し少なめになるんでしょう。

これらの測定を運転モードを「通常モード全振り」「冬期モード全振り」「冬期・通常の中間」「通常モード全振り(2回目)」と変えながら行いました。 冷蔵庫の消費電力量は庫内の食品温度、扉の開閉回数、周辺温度に影響されると予想できますが、生活を行う中でこれらを各運転モードの測定ごとに一定にすることは難しいです。 そこで影響が抑えられることを期待し、各測定は7日間ずつ行います。

が、本当に影響が抑えられたかは不明。 また、測定に用いた機器はすべて家庭用であり、公的機関などによる校正を受けているわけでもないので正確性は保証できません。 さらに「冷蔵庫近くの気温」についても、エアコンにより同一時間帯ではほぼ一定になると期待されるものの、本当にそうか?という保証はないです。 また、この実験は夏期の冷蔵庫周辺気温が高いときに行ったものであり、冬期だとどうなるかは検証していません。

と、そんな感じで結構アバウトですが、以下からは測定結果について述べていきます。

測定結果

消費電力量

まず消費電力量はこうです。

運転モード消費電力量(7日間)
通常モード全振り7.28 kWh
冬期モード全振り7.76 kWh
冬期・通常の中間7.19 kWh
通常モード全振り(2回目)7.14 kWh

冬期モードが一番消費電力量が大きいのは予想どおり。 ただ、その他のモードがほぼ同じなのは意外でした。 何か間違えたかな……と通常モード全振りを2回測定したのはこのためです。

庫内気温

冷凍室

次に庫内気温を見てみます。まずは冷凍室から。 7日間の平均気温はこうです。

運転モード冷凍室気温(平均)
通常モード全振り-20.61 °C
冬期モード全振り-23.02 °C
冬期・通常の中間-21.16 °C
通常モード全振り(2回目)-20.78 °C

「冬期モード全振り」が一番冷えている。 本来は「冷凍室の冷えが弱い」とされるときにもっと冷やすために使う運転モードなのでこれは予想どおり。 他の運転モードは大した違いはありません。

時間的な遷移は次のとおり(気温が低すぎたのか、うまく測定できずデータが欠損している箇所あり)。

冷凍室の気温 冷凍室の気温

やっぱり冬期モードは気温が低めですが、それ以外だとあまり変わりません。 たまに-10℃くらいまで気温が上昇するときがありますが、これは霜取り運転のためにヒーターを使っている影響だと考えられます。 どの運転モードでも1日1回くらいは実施するようで、このときの瞬時消費電力を目視で確認すると(ヒーターの定格消費電力である)110Wほど消費していました。

冷蔵室

続いて冷蔵室の気温。 まず7日間の平均気温はこれです。

運転モード冷凍室気温(平均)
通常モード全振り2.44 °C
冬期モード全振り5.02 °C
冬期・通常の中間2.19 °C
通常モード全振り(2回目)2.02 °C

今度は冬期モードが一番暖かい。 時間的な変化も見ましょう。

冷蔵室の気温 冷蔵室の気温

たまに気温が上がるのは霜取り運転の影響。 それにしては「冬期モード」だと頻度が多いような……気温が上がったときたまに目視で瞬時消費電力を確認するとやはり110Wほど消費されています。 もしかしてこれは頑張って冷凍室の温度を下げたが、それにつられて冷蔵室の温度は下がりすぎたのでヒーターを使って温め直しているのでは……。 とはいえ継続して気温が高いこともあり、この辺はどう制御されているのか本当のところは不明です。

冷蔵庫近くの気温

次は冷蔵庫近くの気温についてです。まずは平均値。

運転モード冷蔵庫近くの気温(平均)
通常モード全振り27.72 °C
冬期モード全振り27.05 °C
冬期・通常の中間26.52 °C
通常モード全振り(2回目)26.65 °C

「通常モード全振り」が冷蔵庫にとっては頑張らないといけない環境です。 「通常モード全振り」は思ったよりも消費電力量が多かったですが、これが影響しているんじゃないかと思います。

時間的な変化はこんな感じ。

冷蔵庫近くの気温 冷蔵庫近くの気温

平均値の傾向どおりですね。 また、あまり今回の検証には関係無いですがエアコンを使っていない時間帯(まだ使わなくても耐えれた時期 or 外出時)も見えてしまってちょっと恥ずかしい。

おわりに

冷蔵庫の庫内気温と消費電力量の測定を行いました。

まとめとしては冒頭で述べたとおり。 夏期に冬期モードを使うと消費電力量が増えます、周辺温度に合わせて適切な運転モードに設定しましょう、です。

感想としては冷蔵庫の気温を測るだけでおもしろかった。 冷蔵庫から温度計を取り出すときは、単にそのまま取り出すと結露してしまう恐れがある。 そこで(冷凍室の温度計は)一度冷蔵室に移して様子をみたり、庫内でジップロックに詰めてから(乾燥空気が入ることを期待し)取り出し、室温になってから開封した。 これが良かったのか、またはそこまで気にする必要はなかったのか、いまのところ温度計の動作に問題ありません。

過酷 過酷

ベランダに設置した温度計くんは元気に「40℃」という測定値を送ってくれます。 おわり。

Footnotes

  1. リチウムイオン二次電池ではなく、リチウム乾電池ですよ。このときに替えた電池がまだ容量が減る気配がなくすごい。

  2. 測定できたとして冷蔵庫用に専用回路となっているか、なっていたとして本当に専用か?2口コンセントで据置型の食洗機とか繋がっていないかという懸念はあります。

  3. 冷蔵庫は大きさが400L~500Lあたりを超えると消費電力量が下がるらしい。小さい冷蔵庫に比べてもちろん本体価格は上がるが差額とkWh単価次第で元が取れるかも知れない。とはいえ自分の場合だとその辺の冷蔵庫は不必要に大きすぎて、差額を回収するまで71年かかる計算になってしまった。