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3Dプリント品に対するトナー転写を試す

FDM Toner Transferを試します

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3Dプリント品に対するトナー転写を試すのカバー画像

2年ほど前にFDM Toner Transferを試していたのでまとめる。

機器のパネルが欲しい

同人サークル向け会計システムの製作#Ver.3.0(2022年夏~)で次図の精算機を自作しました。

精算機 精算機

でもこの見栄えは……良いですか? ちょっと醜いですね。 そこで前面にパネルを付けて、それっぽく見えるようにします。

外注はしにくかった

ここで使うパネルは、アクリルにUV印刷したもので十分でしょう。 レーザーカッターもUVプリンタも持っていないので外注します。

外注の費用は1つ数千円程度。 まぁ……これくらいなら目をつぶりましょう。 Fabスペースを利用して自分でやるとしても、アクリル板を(小売店で個人が1枚だけ)買っただけで外注と同じくらいかかりますよ。

ただ、費用は見なかったことにしても今回の場合は外注しにくかったです。

まず何と言っても納期が合わない。 正しくはギリギリ間に合うか間に合わないかくらいのラインですが……ちょっと遅かったですね。

また、カットパスの問題もありました。 業者によってはカットパスは原則1つのみで、複数あるなら別途見積もりという場合があるようです。 これは面付けにより単価が下がるのを防ぐため?オペレーションの都合?かはわかりませんが、今回は開口部がありカットパスも複数となるので、業者によってはやり取りに手間がかかります。

あとは入稿形式の問題。 Adobe Illustratorは持っていないので.ai形式はちょっと……。 PDFで入稿できるところを選ぶ必要があります。

こうしてだんだん外注はしにくいな……と感じるようになりました。

FDM Toner Transferを試す

FDM Toner Transferという方法があります。 これは3Dプリント品に対するトナー転写の方法で、これで前面パネルを作れるのでは?と考えました。

必要なものは、

  • FDM方式の3Dプリンタ(と造形用のフィラメント)
  • レーザープリンタ(とトナー)
  • OHPフィルム1

で、具体的な手順は下記の動画のとおり。

Toner transfer technique : r/FDM_TonerTransfer
https://www.reddit.com/r/FDM_TonerTransfer/comments/xomhgp/toner_transfer_technique/

一応テキストでも書いておくと、

  1. 転写したいテキストや画像の鏡像を作成する
  2. 作成したデータをレーザープリンターでOHPフィルムに印刷する
  3. 3Dプリンタで転写対象の造形を始める
  4. 1層目(または位置合わせに必要な部分)が造形されたら中断する
  5. 3Dプリンタのビルドプレートに2.のOHPフィルムを印刷面がZ軸で上を向くように位置を合わせて重ねる
  6. 4.の造形物を取り除く
  7. ビルドプレートとOHPフィルムの間に水を入れ、さらにOHPフィルムを粘着テープで強固に固定する
  8. 最初から造形開始し完了を待つ
  9. 造形物の底面にレーザープリンターのトナーが熱転写される!!!

といった感じです。

良さそう。ということで試しましょう。 OHPフィルムは持っていなかったので購入します。 何でも良いと思いますが、ここでは下記の製品を使いました。

SAKAEテクニカルペーパー ポリエステルフイルム A4 10枚 WPO-A4P
https://amzn.to/4mb0wsS

これを使って転写し(てパネルとして取り付け2)た結果はこうなりました。

熱転写によるパネル 熱転写によるパネル

ちょっと転写が薄いところはありますが、遠目で見ればまぁなんとか……。 表面はツルツルしていて良いです。

3Dプリンタの印刷パラメータは下記のとおり。

項目
素材PLA
初期レイヤー高さ0.1mm(デフォルト0.3mm)
初期レイヤーパターン同心円
初期レイヤー速度10mm/s(デフォルト20mm/s)
印刷温度215℃(高め)
Z軸オフセットビルドプレートとノズルを0.1mm離す (+0.1mm)

3Dプリントの様子はこれ。

3Dプリントの様子 3Dプリントの様子

プリントが進むにつれ、OHPフィルムが剥がれて反ってきます。 フィルム自体が温度で変形してしまうのか、(これも間接的には温度ですが)水が蒸発したことによる圧力で反っているのか……。 これによりプリント品も反ってしまうので、なるべくOHPフィルムを剥がさないようにとガムテープで強固に固定しています。 ただ、これでも剥がれて来たのでもっと強固にすべきか、あまりプリントに時間をかけない(小物限定)としたり、1層目が終わった段階でビルドプレートやヘッドの温度を下げたりといった工夫も必要かも知れません。

なお、本当かは検証していませんがレーザープリンターで印刷したてのフィルムのほうが転写されやすい、また3Dプリント後は十分冷えてから剥がしたほうがトナーが定着しやすいと見たのでそれに従っています。

おまけ: 失敗例

ちなみにZ軸を間違えて、ビルドプレートとヘッドが遠すぎたり近すぎたりするとこうなります。

失敗例 失敗例

右側は3回見たら死ぬ絵ではありません。 でもせっかくなので3回見せておきます。

失敗例(再掲) 失敗例(再掲)

失敗例(再再掲) 失敗例(再再掲)

おわりに

3Dプリント品に対するトナー転写を試しました。

(すでに3Dプリンタもレーザープリンタもあったので)OHPシートを用意するだけにしては、結構良い結果だったんじゃないでしょうか。 機械彫刻用標準書体とか使って案内板を作るのも良さそうです。

転写の方法としては別の方法3もあり、またTシャツへの転写などの方法を参考にすれば、もっと簡単やキレイな転写ができるかも知れません。 とはいえ、マルチカラーの3Dプリンタを買ったほうが楽じゃないか?と言われると……それはそうかも……。

Footnotes

  1. 普通紙でも代用できる場合もあるようです。Thermal transfer with ordinary paper : r/FDM_TonerTransfer

  2. テープで貼り付けという雑なものですが、本番で使ったときは多少マシになっています。

  3. Dress Up Your 3D Prints With Toner-Transfer Labels | Hackaday