SDRを試した日記 その0の続きです。 アンテナを改良したり、さまざまな電波を受信したりします。
アンテナの改良
前回、Planar Disk Antennaとループアンテナを作りました。 ただ、ちょっと簡単に作りすぎていろいろ雑だったので改良します。
Planar Disk Antenna
Planar Disk Antennaについては段ボールにアルミホイルを貼り付けただけ。 ちょっと醜いですね。 作り直します。 ここでは100均の使い捨てアルミ皿?鍋?を利用しました。 本来の想定用途は、ケーキの焼型らしいです。
このアルミ皿の直径は25cm。 本当はもっと大きいほうが良い。 そして本来は使い捨てではなくしっかりしているもののほうが良かった。 ただ、店頭に並ぶ金属製の皿としてはこれが一番大きかったのでやむを得ない。 まぁこれでもうまくアンテナとしては機能します。 (サイズが小さくなった分、VHF以下の感度は低下)
ループアンテナ
ループアンテナも改良します。
まず、ループを保つようにちゃんと固定したい。 ここでよく使われるのはフラフープに固定する方法らしい。 3Dプリンタでそれっぽいものを作っても良いですが、既製品があるならそれに越したことはありません。 100均で組み立て式のフラフープを買って固定することにします。
ほか、ループアンテナ自体も作り直したくなってきました。 YouLoopと同じ構造のアンテナ1にしたい。
製作にあたって主に必要となるのは同軸ケーブルと、バランと呼ばれる部品です。 同軸ケーブルについては……やっぱり50Ωは高価なので余っていたTV受信用の75Ωを使いました。
バランについてはメガネコア、具体的には “BN-73-302” という部品を使って構成するのが一般的のようです。 よく分からないので、そのとおりにします。 でもなんか……DigiKeyとかMouserで検索しても出てこない部品なんすよね。 まぁAliExpressだと10個セット$3ほどで売られていたのでこれにしましょう。
送料は追跡なしの方法なら無料。 別に追跡なんて要らないでしょう。 日数は?あまりあてになりませんが、こういうのは1~2ヶ月かかるとしつつも実際は案外すぐ届いたりするもんですよ。 上位の発送方法と比べると遅くはなりますが、急いでいないので気にしません。 はい購入しました。
……1ヶ月経っても届かない……。 手持ち無沙汰で、前回やり残したワイヤレス温湿度計の信号をデコードするを終えてしまいました。 これはもう届く見込みが薄い。
“BN-73-302” は商社?販売店?の型番であり、これとは別でメーカーの型番として “2873000302” が振られているらしい2。 そして、メーカー型番ならDigiKeyでも普通に買える……。 最初からこっちで買っておけば良かった……。 少数だけ必要で送料が割高になるなら、マルツ経由で買ってネコポスで送ってもらえば良い。
あぁ~下手こいた~。 AliExpressでの注文が届かなかったら返金手続きもしないといけないし、なんて面倒なんだ……。 と思っていたら、発送から57日目にして届きました。 良かったね。
これでアンテナを作ってみたわけですが……なんか、前回とあまり感度は変わらないような……。 でも前回のループアンテナでは入らなかったラジオNIKKEIがかろうじて聞こえる? ほかにも短波ラジオが聞こえるようになったような……いや、この辺は前回よく見ていないだけかも……。 と、よく分からない感じでした。 いかがでしたか?
受信の記録
ここからはこんな電波を受信しました、の日記です。
EMI編
3Dプリンタを動かしていると、下図のようなノイズが出ることに気付きました。
3Dプリンタによるノイズ
周波数は時間経過やモータの動きにより若干変動しますが、エアバンドに被っています。 これだとこの3Dプリンタは機内で使用出機内になってしまうでしょう。 たまに何かの機器がAMラジオと干渉するというのはあるようですが……こういう帯域でも出ることがあるんですね。 3Dプリンタだと動いている時間が長いので、気になるのかも知れません。
別の話で、445MHz付近にも下図のような変なノイズがあることに気付きました。 これはテレビに繋がっているある機器、というかHDMIケーブルから出ている模様。
HDMIによるノイズ
実際、画面の内容が変わるとノイズも変化します。 このようなEMIはmartinmarinov/TempestSDRなどで映像を復元できるらしい。 そこで試してみましたが……綺麗な信号ではないのか、それともRTL-SDRが良くないのかうまく復元はできませんでした。 おわり。
SDRangelで受信編
前回の記事では主にSDRSharpを使って受信を試みてみました。 SDRの受信用ソフトウェアとしてはもちろん他にもあります。 今回は、下記のSDRangelというソフトウェアを見かけたので試してみます。
SDRangel – Open-source TX & RX Software Defined Radio
https://www.sdrangel.org/
(自分が気になった)特徴としては、デジタル無線のデコーダがいくつか内蔵されていること。 デコードだけ行うソフトウェアは他にもありますが、SDRangelは信号の受信からデコードまで一気に行えて簡単です。 そんなSDRangelでいくつかの信号を受信してみました。
ADS-B
まずはADS-B。 航空機が発信するデータです。 これを受信するのがSDRの定番……な気はしますが、前回の記事では「受信は行っていません」としました。 デコードするの面倒だな~と思っていましたからね。
SDRangelだと “Preferences” > “Configurations…” からADS-Bを選択するだけ3で簡単に受信できました。 (ADS-B用のアンテナではないためか、またはタイミングが悪かったのか航空機は少ないですが)こんな感じの画面が出てきます。
ADS-Bの受信
長時間受信するような用途だとどうかは分かりませんが、ちょっと受信するだけなら便利じゃないでしょうか。
DSD
次はDSD (Digital Speech Decoder)。 デジタル音声無線のデコードについてです。
デフォルトでConfigurationは用意されていないので、自分で設定する必要があります。 具体的な設定方法は下記Quick startのとおりですが、受信デバイスを設定して “Add Channels” で “DSD Demodulator” を選択します。
Quick start · f4exb/sdrangel Wiki
Running the program
https://github.com/f4exb/sdrangel/wiki/Quick-start#running-the-program
“Add Channels” は繰り返し実行できるので、複数のDSD Demodulatorを使ってそれぞれ異なる周波数を選択することも可能です。 これでアマチュア無線のD-STARや、デジタル簡易無線のうちNXDN48方式かつ秘話4のかかっていないもの5のデコードができました。
ただし、たまに動作が止まってしまうことがあります。 特に2つ目のDSD Demodulatorを追加した後など。 この場合はSDRangelを再起動すれば直るかも知れません。 また、DSD Demodulatorは各種無線方式を切り替えながらデコードを行っています。 そのため、信号は受信できたものの無線方式が合っていないためにデコードに失敗し、結局音声は聞こえなかったということも起こります。 どうしても聞き逃したくないという場合は、事前に信号の取得だけを行ってデコードは後で行うような構成となるでしょう。
ほか
FT8も試してみました。 普通に受信できましたが……それだけなので詳細は割愛。
また、SDRangelではLoRaのデコーダも内蔵しているようです。 ただ、これは周りにLoRaの機器はなかったので未検証。
あと面白そうなものは? 気象衛星から送信される信号、特に画像を受信するというのが良いんじゃないでしょうか。 これもとりあえずSDRドングルで受信するってのが定番っぽいですよね。 気象衛星から送信される信号と言っても様々あるようですが、アメリカのNOAA衛星から送信されるAPT信号を受信するのが簡単そうです。 SDRangelでもAPTデコーダが内蔵されていますからね。
……ところが、なんと受信を試そうとした数日前にすべてのNOAA衛星が廃止されたようです。 もうAPT信号を送信する衛星はありません。 ただ、APT信号以外の方式で気象画像を送信する衛星はまだあります。 その信号を受信しようとしたのが、次の「SatDumpで受信したかった編」です。
SatDumpで受信したかった編
APT信号の代わりに、ロシアのMeteor-M衛星から送信されるLRPT信号の受信を試みます。 この信号はSDRangelではデコードできず、下記のSatDumpというソフトウェアを使ってみることにしました。
SatDump
https://www.satdump.org/
(NOAA衛星の廃止を受けて)各種衛星の受信ガイドも用意されています。
Beyond POES: what to do with amateur weather satellite reception? | SatDump
https://www.satdump.org/posts/beyond-poes-amateur-satellite-reception/
でもデコードどうこうの前に、そもそも信号が受信できているでしょうか? そこで、SatDumpに自分の緯度経度を設定して目的の衛星をTrackingし、自分の周囲に来る時間帯の受信スペクトラムを確認してみました。 ……が、スペクトラムに変化はなし。
ということで受信できませんでした。 おそらくアンテナが悪い。 これだとAPT信号も受信できていなかったことでしょう。 衛星用のアンテナを構成して受信すべきでしたね。 ちゃんと用意ができたらまた受信に挑戦したいと思います。
UV-K5を購入
「SDRを試した」とはちょっと違いますが、受信が楽しくなりSDRドングル以外での受信も試したくなってUV-K56を購入してしまった。
UV-K5(より正確にはUV-K5(8))
AliExpressで2500円ほど7。 こっちは57日……ではなく、AliExpress Standard Shippingだったので5日で届きました。
ファームウェアは下記のものを導入。
egzumer/uv-k5-firmware-custom
https://github.com/egzumer/uv-k5-firmware-custom
送信についてはもちろん無効に。 ほか設定8や操作方法はマニュアルのとおり……ですが、自分用にメモしておくとこんな感じです。
主な操作
F + 0
… FMラジオモードの切り替え1
を長押しすることで周波数レンジが切り替わる
F + 2
… 画面上のA/B(上/下)の選択を切り替えるF + 3
… (A/Bどちらか選択しているほうの)VFO/メモリ登録済み周波数の選択を切り替える- VFOはその場で周波数を入力する機能
なお、F + 数字
は数字ボタンの長押しで代替できる。
Programmable Keys
設定で下記の割当とした。
M
長押し … 復調方式 (AM/FM/USB) の変更F1
… モニター(スケルチをOFFにする)F2
…M
長押しと同じ。復調方式 (AM/FM/USB) の変更F1
長押し … フラッシュライトF2
長押し …F1
長押しと同じ。フラッシュライト
範囲スキャン
CHIRPなどで確認できる下記のような項目に、事前にスキャンしたい周波数帯が登録されているものとする。
F1(18M-108M)A
F1(18M-108M)B
:
F7(470M-1300M)A
F7(470M-1300M)B
ここで下記の操作を行う。
- A側をVFOモードにする
F + 1
で、F1 A
に登録された値を呼び出すF + 1
を押すたびにF2 A
,F3 A
,…と変化するので目当ての値になるまで繰り返す
- 満足したらB側でも同様の操作を行う
F + 5
を押すscan
ボタンでスキャン開始
以上。
おわりに
日記でした。長い。
Footnotes
(ほぼ前回の記事を再掲することになりますが)製作にあたっては次のブログを参考にさせていただきました。参考1:マグネティックループアンテナの実験 – 自宅で隠遁生活 参考2:Moebius Magnetic Loop Antenna | Hackaday.io 参考3:DIY: How to build a Noise-Cancelling Passive Loop (NCPL) antenna | The SWLing Post ↩
正確性は保証しません。もしかしたら類似品とか互換品かも知れない。 ↩
受信デバイスにRTL-SDRドングルを利用する場合。もしそれ以外のデバイスを使っている場合は、自分でADS-Bデコーダの設定を済ませる必要がある。 ↩
第三者に音声を聞かれにくくする。事前に送受信側で共通のコードを指定して使うらしい……ですが、このコードの組合せ数は秘話機能が強化されているという機種ですら491,505通りです。鍵長bitsの暗号と考えるとちょっと……。とはいえ、rot13でも、また
ey
で始まっていなかったり=
で終わっていなかったりする(暗号化ではなくエンコード方式の)Base64でも、いきなり見たらよく分からないだろうと言われたらそのとおり。 ↩というよりもこれ以外の無線(NXDN48方式ではない または 秘話のかかっているもの)は遭遇できず……。 ↩
有志によるファームウェアを導入することで広帯域受信機にできます。 ↩
通常はドル建てで、Revolutなどの海外事務手数料のかからない手段で決済するのが一番安い……はずなのですが、なぜかこのときはAliExpress側のレートで円決済するのが一番安かった ↩